トップ捕食者なき世界ーーシカの被害など

オオカミなどトップ捕食者を駆逐した後、その地域はどのようになったか?

アメリカのイエローストーン公園では、オオカミを駆逐した結果、
シカが異常に増え、森林の若芽を食べ、若い木々の皮を食べ、
森林は枯れ始め、河川の川岸の草花や木々もなくなり、
川辺の小動物もいなくなり、ビーバーも消えた。
森林全体が枯れたため、鳥類もいなくなった。
シカたちも餌が少なくなり、飢え始めた。

そこで、さまざまな議論の末、アラスカからオオカミをつれてきて

公園内に放った。

すると、すぐに、川辺や藪の近く、オオカミたちがよく立ち回るところから、
草花や木々が育ちはじめた。
そして、5年もたたない内に、自然が大きく回復し始めた。

シカの被害についても、現在日本でも、北海道や東北でも大きな問題になっている。

ベネズエラのオリノコ川とカロニ川の合流地点に大きなダムが建設され、
巨大なダム湖ができた。山の頂き部分が、ダム湖の島として残った。
そこにサルが残り、捕食者のいないサルの楽園となった。
サルの数が増えるにつれて、鳥類がいなくなっていった。
サルによって、卵や雛がつぎつぎに食べられていったためである。
また、地上では、天敵のいないアリによって、若葉がつぎつぎにかみ取られて巣に運ばれていった。
葉は落ち葉となって土壌を豊かにすることがなかった。
そしてその結果、鳥が消え、昆虫が消えて、荒れた土地の上の枯れた木々ごとに
5,6匹のサルがいて、互いに距離を置いていた。
このサルは元々、群れで行動するのだが、ここでは1匹づつ孤立して、互いにいがみ合っている。

このように、保護を目的にトップ捕食者を駆逐した結果、
その地域の多様性を破壊し、多くの動植物を絶滅の淵に追いやり、
保護対象も結果的に餓死へと追いやったしまう。

上記の例以外にも、カンブリア爆発の異様な生物やラッコやヒトデなどさまざまな例を挙げている。

訳も読みやすいし、写真も図版もあり、一読をお勧めします。

---- 『捕食者なき世界』 ウィリアム・ソウゼンバーク著  --

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