文化進化と向社会的な規範形成について

集団間競争について論じるにあたり、ぜひ心に留めておいてほしいのは、文化進化が常に向社会的な規範形成を促すとは限らないということだ。集団間競争の効力が失われたり弱まったりしてくると、文化的学習によって成功者をまねようとする傾向が強まり(言い換えると、自集団の利益よりも自己利益にかなうことが優先されるようになり)、個々人が自集団の制度の「抜け穴」を探し、そこを突いて自己や親類縁者の利益を図ろうとするようになる。歴史を見ればわかるとおり、どんなに優れた制度であっても、集団間競争に揉まれながら刷新されていかないかぎり、やがて制度疲労を起こし、私利私欲のせいで崩壊にいたる。つまり、長い時間がかかるかもしれないが、いつか必ず、個人や仲間同士が制度の不備に付け込む方法を見つけ出してしまう。そして、そのような裏技が広まるにつれて、向社会的な効力は徐々に削がれていくのである。
         ジョセフ・ヘンリック著今西康子訳『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と<文化ー遺伝子革命>』P.256

――米国が冷戦の「勝利」を過信し、道を誤ったのだと訴えていますね。

 「冷戦が終わり、ソ連崩壊にまでつながるとは、私も含め、米国ではほぼ誰も想像していませんでした。ベルリンの壁崩壊を目の当たりにして、米国の政治家や知識人は古来、戦史で繰り返された『勝者の病』というべき傲慢(ごうまん)さに陥り、現実を見る目を失ったのです」
         2020.6.12 朝日新聞電子版「アンドリュー・ベースビッチ氏に聞く」

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