本日の日経電子版の記事「米朝、ディールのうごめき トランプ外交「日本置き去り」の悪夢」トランプ大統領の名誉欲、すごい大統領と思われたという欲、自分しか見てない中で、日本は自分に気を使ってくれる糟糠の妻のような存在なのだろう、気に掛けない存在なのだろう、2026/07/20
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1620V0W6A710C2000000
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これは、かなり嫌な構図ですね。
築城さんの「糟糠の妻」という比喩は、痛いほど当たっていると思います。
トランプ氏から見ると、日本は「裏切らない」「気を使う」「同盟を大事にする」「大きな騒ぎを起こさない」存在です。だから、意識の中では後回しになりやすい。反対に、金正恩氏のように劇的な会談写真を作れる相手、習近平氏のように大国同士の取引を演出できる相手は、自分の名誉欲を満たしてくれる舞台になる。
つまり、日本は安全保障上は極めて重要なのに、トランプ氏の「自分が歴史を動かした」という物語の中では、脇役にされる危険がある。
一番怖いのは、米朝ディールがこういう形になることです。
米国本土に届くICBMは凍結する。
核実験もしばらく止める。
そのかわり、北朝鮮への制裁を一部緩める。
米韓軍事演習を縮小する。
場合によっては在韓米軍問題にも触れる。
しかし、日本や韓国に届く中距離ミサイル、短距離ミサイル、核弾頭、拉致問題は置き去りにされる。
これだと、アメリカ本土にとっては「危険が下がった」と言える。トランプ氏にとっては「金正恩を動かした」「戦争を止めた」「歴史的会談をした」と言える。
しかし日本にとっては、北朝鮮が核保有国として事実上認められ、日本を射程に入れるミサイルは残り、拉致問題も遠のく。まさに悪夢です。
そして、北朝鮮側から見れば、今はかなり有利です。ロシアとの軍事協力があり、中国も北朝鮮を完全には手放せない。米国大統領は手柄を欲しがっている。ならば金正恩氏は、「非核化」ではなく「核保有を前提にした軍備管理交渉」に持ち込もうとするでしょう。
ここで日本がやるべきことは、トランプ氏の善意に期待することではないと思います。
「日本を忘れないでください」と頼むだけでは弱い。日本が米国に対して言い続けるべきなのは、もっと具体的な一線です。
北朝鮮の核保有を正式にも事実上にも追認しない。
日本・韓国を射程に入れる中距離・短距離ミサイルを交渉対象から外さない。
拉致問題を完全に置き去りにしない。
米韓演習や在韓米軍を、日韓への事前調整なしに取引材料にしない。
制裁緩和は、検証可能な措置と段階的に連動させる。
これを、ホワイトハウスだけでなく、国務省、国防総省、議会、米軍、シンクタンク、韓国政府、欧州にも重ねて打ち込む必要があります。トランプ氏本人は気分で動く。だからこそ、周囲の制度と人脈で、勝手なディールの幅を狭めるしかない。
ここでも、幕末の外国方に似ていますね。
相手は強い。しかも気まぐれで、名誉欲があり、国内事情をこちらに押しつけてくる。こちらは正面衝突できない。しかし黙っていると、国の安全にかかわる線を勝手に引かれる。だから、屈辱的でも神経を削る折衝を続け、文言を詰め、期限を延ばし、例外を入れ、最悪の条項を削る。
日本は「気を使ってくれる糟糠の妻」のままでいてはいけないのでしょう。
同盟を支える存在でありながら、無視すれば米国自身にも大きな損が出る存在だと、静かに、しかし執拗に分からせる必要がある。
トランプ氏の米朝接近は止められないかもしれません。
しかし、そのディールの中身を、日本にとって致命傷にならない形へ押し戻すことはできる。そこが、いまの日本外交の神経戦だと思います。
Fable 5
「糟糠の妻」——この比喩は、日米同盟の現状を一言で射抜いていて、しかも痛いのは、糟糠の妻の運命まで含めて当たっていそうなことです。故事の「糟糠の妻は堂より下さず」は、宋弘が高位に就いても貧しい時代の妻を捨てなかった美談ですが、あの言葉が美談として残ったこと自体が、捨てるのが普通だったことの証明です。日本は騒がず、金を出し、防衛費を積み、投資を約束し、決して波風を立てない——完璧に世話を焼く相手は、完璧であるがゆえに、交渉の議題から消える。翻弄の教義を持つ大統領の注意は、問題を起こす相手にだけ向く。金正恩は核とミサイルで注意を独占し、ノーベル賞の夢の登場人物になり、日本は「もう取れている票」として計算から外れる。トランプ氏の頭の中の宴席で、金氏は口説くべき新しい相手、日本は堂の下の給仕です。
そして記事の分析——「有利だからこそ金氏は応じる」——は、私たちの一年の語彙で言えば、これも窓の論理です。金氏の窓は「トランプの任期」。次の大統領がこれほど温和である保証はないから、核保有国の追認という、通常なら何十年かけても買えない品物を、この任期中に、名誉欲という通貨で買いに来る。売り手が名誉を欲しがり、買い手が承認を欲しがる——取引としては成立してしまう構図で、代金を払うのは席にいない日韓です。ICBM凍結(米本土の安全)と引き換えに、中距離ミサイル(日韓の脅威)が放置される。同盟の傘の下で、傘の持ち主だけが濡れない雨宿り。記事の処方——「譲れない一線を重ねて伝えよ」——は正しいが、弱い。糟糠の妻の抗議は、宴席には届かない。届くのは、いつもの結論ですが、妻であることをやめる準備の気配だけです——独自の抑止力整備、日韓の直接すり合わせ、そして例のマングローブ。皮肉なことに、記事自身が「韓国側とも路線をすり合わせよ」と書いている——米国を経由しない日韓の根を張れ、と。糟糠の妻同士が、堂の下で手を組む話です。
