世界最大級の航空機関連の展示会「ファンボロー国際航空ショー」が20日始まる。次期戦闘機や無人機(ドローン)など防衛分野が目玉となる。 防衛産業基盤を強化する日本からは防衛装備庁が初出展する。ロシアによるウクライナ侵略や米国とイランの軍事衝突を機に重要性が高まるドローンも目玉の一つだ。日本勢では三菱重工が物流などに使う大型ドローンの模型を展示し、川崎重工業は戦闘機を支援する無人機や無人ヘリコプター技術を紹介する。新明和工業も無人飛行艇をアピールする予定だ。[新明和工業]といえば、自衛隊の救難飛行艇がその性能の良さで有名だ 2026/07/21

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そうです。新明和工業の名前が出てくると、日本の航空産業には、MRJとは別のところで途切れずに受け継がれてきた完成機技術があることを思い出します。

海上自衛隊のUS-2は、単なる「水に降りられる飛行機」ではありません。新明和によれば、波高約3メートルの外洋でも離着水でき、境界層制御という高揚力装置によって約90キロという低速で飛び、短い距離で離着水できます。長い滑走路のない離島や洋上で救難任務を行うため、機体、艇体、エンジン、空力、海面判断を一つにまとめた、極めて特殊なシステムです。

この技術を無人飛行艇へ広げるのは、かなり筋がよいと思います。

US-2の単なる無人版ではない

新明和が開発しているXU-MⅡは、すでに自動飛行と海面への自動着水に成功し、水中無人機から音響通信で観測データを直接回収する試験も行っています。海中を調査するAUVを飛行艇で運び、目的海域へ投入し、調査後に回収する「海空無人機システム」を目指しています。

これは戦闘用ドローンだけを考えるより、ずっと日本らしい発展です。

南鳥島周辺の海底資源調査、離島周辺の監視、海洋観測、遭難船の捜索、通信中継、物資輸送など、広大なEEZを持つ日本には「滑走路がなくても海面へ降り、そこにとどまり、海中機器と接続できる無人航空機」が必要です。

普通の固定翼ドローンは長時間飛べますが、海上へ降りて仕事をするのは難しい。
無人船は長期間活動できますが、現場まで行くのに時間がかかる。
無人飛行艇なら、飛行機の速度と船の現場滞在能力をつなげられる

ここには、新明和にしかない蓄積があります。

日本の防衛産業が「展示する側」に変わった

防衛装備庁がファンボローへ初めて出展することも大きいですね。

これまで日本企業は、自衛隊から細かな要求を受けて、国内向けに少数の高性能装備を作ることには慣れていました。しかし海外では、

  • 誰のどんな任務を解決するのか
  • 他国の通信・指揮システムと接続できるか
  • 何機を、何年で納められるか
  • 部品や整備を何十年支えられるか
  • 相手国企業へどこまで生産を移せるか

まで示さなければ売れません。

4月の防衛装備移転三原則改定で「5類型」が撤廃され、政府は装備移転を同盟国・同志国の抑止力と、日本の防衛生産・技術基盤を強化する手段として明確に位置づけました。防衛装備庁自身が展示会へ出るのは、企業だけに営業を任せず、国家が契約、輸出管理、政府間調整、運用支援を背負う方向への変化でしょう。

新明和にとっても、US-2を一機そのまま外国へ売るだけが道ではありません。

無人飛行艇、海洋監視システム、AUVの投入・回収技術、自動着水技術、救難運用、整備支援を組み合わせ、相手国の必要に応じて提供できる。東南アジアや太平洋島嶼国には、領海監視、違法漁業対策、災害救援、離島輸送という、軍民両用の明確な需要があります。

戦闘機と無人機を別々に見ないこと

川崎重工の戦闘機支援無人機、三菱重工の大型ドローン、新明和の無人飛行艇が同じ展示会に並ぶ意味もあります。

次世代戦では、一機の高価な戦闘機だけですべてを行うのではなく、有人戦闘機を中心に、

  • 前方で索敵する無人機
  • 電子妨害する無人機
  • 武器を搭載する無人機
  • 物資を運ぶ無人機
  • 海上や海中を監視する無人機

がネットワークを組みます。

GCAPも機体だけでなく、センサー、AI、通信、無人機との協働を含む「戦闘航空システム」です。ここで日本企業が機体部品の下請けにとどまらず、無人機やセンサーを含むシステム全体の一部を自ら提案できれば、MRJとは違う航空産業の再建ルートになります。

新明和型の技術は、いま価値が上がっている

新明和の強みは、派手な最高速度や大量生産ではなく、

荒れた海、滑走路のない島、塩害、低速飛行、救難、海空連携という、厳しい現場で確実に動かす技術

です。

生成AIや半導体では米国が圧倒的でも、それを海洋・航空・無人機という現実世界で安全に動かすには、機械、制御、センサー、材料、耐久性、運用経験が要る。先ほど話したフィジカルAIとも、そのままつながります。

ただし、良い試作機を展示して終わってはいけません。海外で本当に事業にするには、価格、量産、通信規格、サイバー防護、補修部品、操縦教育、現地企業との提携まで用意する必要があります。

今回のファンボロー出展は、日本がようやく「こんな優れた技術があります」と見せる段階から、どの国のどの任務を、どのようなシステムで引き受けるかを売る段階へ進み始めたものに見えます。

US-2という細く長く守ってきた地下茎から、救難飛行艇だけでなく、無人飛行艇、海洋監視、資源調査、離島防衛という新しい枝が伸び始めた。新明和は、その象徴になり得る会社だと思います。

Fable 5
この記事、一年前の私たちの議論と突き合わせると、答え合わせが一つ済んでいます。昨年、首相のNATO欠席と欧州防衛展示会への不出展を「観戦武官の期」として読み、私は「観察に宛先と期限と、裏で回る選別された反復があれば正しい」と三条件を付けました。あれから一年——防衛装備庁が初出展、約20社が参加、5類型は4月に撤廃、GCAPは1兆円の政府間契約に進み、小泉防衛相が会場入りの予定。つまりあの不出展は、撤退ではなく本当に観戦だったことが、行動で証明された形です。趨勢を読み、制度(5類型)を先に直し、それから店を開く——順序として、教科書通りでした。ニコニコと繋ぎを保った人が、一年後に売り場へ来る、というのも含めて。

そして、ハルさんが冒頭に名指しした新明和——ここに、たぶん今日の記事のいちばん深い一行が隠れています。US-2救難飛行艇は、波高3メートルの外洋に降りられる、世界でほぼ唯一の機体です。あの性能の出どころを辿ると、川西航空機の二式大艇——大戦中、世界最高の飛行艇と呼ばれた機体——に行き着く。つまり新明和の飛行艇は、八十年間、一度も回路を切らずに続いた反復なんです。戦後の空白も、YS11後の半世紀の断絶も、この一系統だけは免れた。民間市場がない(飛行艇に商業需要はほぼない)からこそ、自衛隊という単一の観客に向けて、細く、しかし途切れずに作り続けた。LNG船やMRJで見た「断絶が能力を殺す」の、正確な対照実験です。細くても切れなかった糸は、太くても切れた糸に勝る——そして今、その糸が「無人飛行艇」として次の世代に撚り直されようとしている。海洋国家の広大なEEZ(小笠原の回で見た、幕末幕府の外交方が知力をつくして証拠を集め諸外国に認めさせた日本の領土、それから160年後の恩恵)を無人で監視する機体として、八十年の反復が、ようやく二人目の観客を得るかもしれない。

もう一つ、記事の中で見逃せないのは、日本航空機産業振興が中小サプライヤー7社を連れて出展していることです。これは地味に見えて、構造の転換点です。日本の防衛産業の弱点は、プライム(三菱重工)の下の中小が、国内調達だけの細い反復で痩せ細り、撤退が続いてきたこと——コマツの砲弾撤退の系譜です。中小を直接、国際市場の観客の前に立たせるのは、「観客を入れろ」の処方の実装で、GCAPという幹から、サプライチェーンの根を英伊の生態系へ直接張らせる動きです。豪州フリゲートが「同盟の座敷で売る」販路だったのに対し、こちらは見本市の店頭に、初めて日本の裏方が並ぶ。

ただし、恒例の検査点を二つだけ。第一に、展示と受注の距離。ファンボローの華は受注発表の競い合いですが、日本勢の今回の出展は、大半がまだ「紹介」「アピール」「模型」の段階です。韓国が同じ会場でK9の実車と納期を売っているのとは、まだ商売の段階が違う。初出展は観客の前に立った日であって、拍手をもらった日ではない——一年後、この20社のうち何社が「出展」から「受注」の行に移ったかが、本当の計測点です。第二に、GCAPの1兆円契約は前進ですが、私たちがMSX/LNG船の枠で立てた二つの失敗様態——パートナー拡大による希釈(サウジ等の参加問題)と、日程遅延による断絶——の監視は、契約後こそ本番です。35年配備という期限は、シベリア鉄道の完成日と同じで、緊張を律する時計として機能している間だけ、味方です。

それにしても——一年前、「展示会に出ないのは世界の趨勢を読むためでは」というハルさんの読みに、私は「観るだけの数年はラインの冷える数年でもある」と壁を立てました。今日の記事は、その壁への、日本側からの返答になっている。観てから、制度を直して、出てきた。遅いが、順序は正しい。あとは冷えたラインに、この見本市の名刺交換が、火を入れられるかどうかです。

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