今日の日経新聞に載っていた「全固体電池の新部材量産、住友化学、EV見据え28年度にも」や「AI半導体検査精度1000倍」など日本はこういう分野に強いね 2026/07/21

Fable 5
検索では今日の住友化学の記事そのものは掴めませんでしたが、周辺の地形は確認できます——住友化学は、まさに石油化学の構造不況(千葉のエチレン設備の停止判断など、汎用石化からの撤退戦の只中にいる会社)で、その収益の細る本業から、電池材料やICT材料へ転記を急いでいる当事者です。富士フイルムが乳剤を医薬に持ち替えた、あの型の実演中の一社。全固体電池の部材量産は、その転記の一行として読めるハルさんの「日本はこういう分野に強いね」は事実として正しい——ただ、一年の締めくくりとして、この「強さ」を最後にもう一度だけ解剖しておきたい。なぜ、正確にこの階だけ強いのか。

答えは、この一年の全部の議論が一点に集まる場所にあります。この階には、観客と反復と時定数の三つが揃っている。第一に観客——電池メーカーと半導体工場は、世界で最も要求の高い審査員です。純度がppb単位で測られ、不良が数字で即日突き付けられる。菓子パンの棚と同じ検証密度が、B2Bの奥の間で回っている。誠実の宛先が、社内ではなく客に向く構造が最初からある。第二に反復——三井金属のA-SOLiDは2016年の開発発表から、サンプル供給、量産試験、二次増強、初期量産工場と、十年がかりの階段を一段ずつ登っている。第三に時定数——硫化物の純度管理や欠陥検出の光学系は、論文を読んでも作れない。工程の暗黙知が数十年分堆積していて、追う側は金では時間を買えない。速度と規模が勝負を決める階(EV、スマホ、プラットフォーム)では日本は負け、時間だけが勝負を決める階では勝ち続けている。強さの正体は民族の器用さではなく、時間が参入障壁になる階を、結果として選んで生き残ったという淘汰の産物です。

そして全固体電池には、もう一つ特別な意味がある。これは復讐戦なんです。リチウムイオン電池は吉野彰氏の発明で、90年代の日本は世界シェアの大半を握っていた——そして製造の覇権をCATLとBYDに明け渡した。ISDB-T型の「発明して市場を逃す」の、最大級の実例。全固体は、電池の判定基準がもう一度替わる、数十年に一度の土俵替えで、造船のアンモニアと同じ「後発も先頭も並び直すスタートライン」です。日本勢が部材から攻めているのは、前回の敗因(セルの量産投資で中韓に負けた)を踏まえた布陣でもある。ただし——ここに今日の唯一の壁を立てると——部材の強さは、セルを誰が作るかという問いを免除しません。硫化リチウムと電解質を日本が握っても、セルの量産反復をまた中国が回すなら、それはLiBの再演で、日本は二度目も「床下の配管屋」で終わる。トヨタとホンダとマクセルが、今度こそセルの反復を国内で回し切るか。部材の量産開始という今日の記事は、その本番の前奏として読むべきで、強さの確認で閉じてはいけない見出しです。

最後に、AI検査精度1000倍の方に、一つ美しい皮肉を。この一年、私たちは日本の病を「検証の形骸化」——手続きは回るが実体を測らない——と診断し続けてきました。ところが日本の産業の最強の階は、レーザーテックの検査装置、島津や堀場の計測器、そして今日の検査精度1000倍——世界の検証装置そのものなんです。制度の検証は苦手で、物理の検証は世界一。この非対称は偶然ではないと思います。物理の検証には観客(客と市場)がいて、制度の検証には観客がいなかった——それだけのことで、能力の問題では最初からなかった。世界中の半導体が日本の目で検査されて出荷されていく。あとはその目を、自分の制度の奥の間に向ける習慣だけ——一年前にCD-ROMから始めた話は、結局、この一文に畳めるのだと思います。

ChatGPT 5.5
この二つの記事は、一見すると電池と半導体検査で別分野ですが、日本企業の同じ強みが出ています。

「見えないところ」を制御する力

完成したEVやAI半導体は華やかですが、量産を可能にするのは、

  • 材料の純度や配合
  • 電極と固体電解質の接触状態
  • 温度や圧力による微小な変化
  • 肉眼では見えない漏れ電流
  • 故障に至る前のわずかな兆候

といった、極めて地味な部分です。

エスペックの半導体評価装置は、高精度に電圧と電流を加えながら、トランジスタの特性が時間とともにどう変わるかを測定します。公式資料では、電流を1ピコアンペア単位で測定でき、故障原因の解明や寿命評価に使えると説明しています。AI半導体の高性能化に伴って発熱や配線への負担が増すほど、こうした検査の価値が上がります。

つまり、日本が強いのは「新原理を発表する瞬間」だけではなく、

一度できたものを、何百万個作っても同じ性能にする

ところなのですね。

発明と量産の間にある深い谷

全固体電池も、研究室で充放電できたから直ちにEVへ載せられるわけではありません。材料同士の界面、耐久性、安全性、製造速度、歩留まり、価格を同時に満たす必要があります。トヨタと住友金属鉱山も、全固体電池用正極材について、性能だけでなく品質、安全性、コスト低減まで含めて量産技術を開発しています。

ここで化学会社が新部材を作り、試験装置会社が微細な異常を測り、工作機械会社が加工し、自動車会社が統合する。以前から話している日本産業の地下茎が、そのまま見えています。

AI半導体でも同様です。日本には最先端AIチップを設計する巨大企業は少ない一方で、材料、切断・研削、洗浄、塗布、検査、パッケージ、信頼性評価などでは重要な位置を占めています。AI投資の拡大で、アドバンテストなど検査装置企業の需要も伸びています。

ただし、部材だけを売って終わる危険

日本の弱点は、優れた材料や装置を作っても、それを使った最終製品、市場標準、運用データ、顧客との接点を外国企業に握られやすいことです。

住友化学の部材が中国や韓国の電池メーカーに使われ、エスペックの検査技術が米国のAI半導体企業の競争力を高めるだけでも、事業としては成立します。しかし、それだけでは日本国内に完成品産業や設計主権が残らない。

したがって今度は、

材料+検査装置+製造工程+完成品+使用データ

までを国内企業や同志国企業とつなぐ必要があります。

フィジカルAI、全固体電池、航空機、造船、防衛装備は、まさに日本の材料・計測・工作機械・信頼性評価の強みを、完成したシステムへ戻せる分野です。

日本は、大きな花を派手に咲かせるのは不得意でも、花を咲かせるための土壌、水、根、肥料、温度管理には強い。今は、その地下茎を他国の花だけに供給するのではなく、自分たちの完成品まで育て直せるかが問われているのでしょう。

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