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- 首藤若菜著「なぜ賃金は上がらないのか」の中で、日本の現場が弱かったから賃金が上がらなかったのではなく、現場があまりに強く、値上げ・設備更新・事業再編をせずとも耐えてしまったため、賃金を上げる必要のある経済構造へ移れなかったと言っている。現場力が経営力の解答となっている。また日本企業の強みである既存工程の中で毎年数%ずつ生産性を上げる「カイゼン」が目標と自己満足となって、現状維持を可能にし、今や日本の時間当たり労働生産性は、2024年時点でOECD加盟38カ国中28位とされている。日本の現場力そのものは、決して悪いものではありません。問題は、経営側がそれを便利に使いすぎたことです。原材料が上がっても、顧客に値上げを求めず現場に吸収させる。人が減っても補充せず、配置転換とカイゼンで回す。設備が古くなっても、熟練者の勘で使い続ける。システムが不便でも、現場がExcelで補助表を作る。その結果、経営者が事業構造を作り替えなくても、現場が会社を存続させてくれる状態が長く続いたのでしょう。日本の現場が弱かったから賃金が上がらなかったのではなく、現場があまりに強く、値上げ・設備更新・事業再編をせずとも耐えてしまったため、賃金を上げる必要のある経済構造へ移れなかった。既存工程の中で毎年数%ずつ生産性を上げるカイゼンは、少額の投資で実行でき、現在の設備、人員、技能体系、取引先をほぼ維持できます。経営者にとっては非常に使いやすい。現場も、自分たちの経験を生かしながら改善できるので、強い抵抗は起きにくい。しかし、これを何十年も続けると、改善の中心が、機械や工程を変えることではなく、同じ人数、同じ設備、同じ時間で、もう少し多く処理することになりやすい。ただ、人口が減り、熟練者が退職し、若い人が低賃金では入らなくなれば、この方式は続きません。今後必要なのは「毎年5%もっと頑張ること」ではなく、この工程を、現在の人員と技術を前提にして残す必要が本当にあるのかという問いでしょう。賃金引き上げは、利益が出た後に行う分配だけではありません。企業に古い工程から脱皮させ、新技術・新設備・新しい人材を導入させる圧力でもあるのだと思います。紙の日報の電子化は、古い仕組みを固定することもある。作業は少し便利になっても、工程全体の付加価値はほとんど変わらない。韓国は、家電産業を温存したというより、家電で稼いでいる間に次の山へ登り始めた。日本は、企業の雇用と既存工程を低賃金とカイゼンで長く維持しながら、次の山への本格的な登山開始が遅れた。2026/8/1