進化の大ジャンプー3 知性の誕生
ひょっとして恐竜人間が?
カナダのアルバータ州立恐竜公園では、
3万個以上の恐竜の化石が発見されたが、
その中に
トロオドンという背丈が1.2mほどの小型の恐竜の化石があった。
トロオドンは、考える恐竜といわれている。
他の恐竜との違いは、
物を立体的にとらえる大きな眼
互いに向かい合っている指
物を掴めたかもしれない
大きな脳
他の恐竜の大きさに対する脳の大きさの比率で、3~5倍
獲物を誘き出して捉えることもやっていたかもしれない
6550万年ほど前の白亜紀
直径が10kmにも及ぶ隕石が地球に落下し、
全ての恐竜が絶滅し、
トロオドンも絶滅した。
この絶滅が無く、現在まで進化していたとしたら
2足直立歩行の恐竜人間になっていたかもしれない。
一方、哺乳類も2億年ほど前、新しい脳を獲得する。
哺乳類の先祖パドロコリュウムは、3cmほどの大きさでネズミのような形をしているが、
驚くべきことに、大脳新皮質を持っていた。
大脳新皮質は、感覚をまとめる能力を持つ。
大脳新皮質を獲得したことで、
視覚、聴覚、触覚からの情報をまとめ、
総合的な判断ができるようになった。
言わば、全く新しいコンピューターを手に入れたようなものだ。
これにより、より安全な新世界である夜も行動が可能となった。
子孫繁栄の礎が築かれたのである。
脳ができる仕組みは
アクセル遺伝子とブレーキ遺伝子が関わっている。
アクセル遺伝子は、脳細胞を増殖するように働き、ブレーキ遺伝子はそれを抑えるように働く。
哺乳類以外は、その両方が働いて小さな脳ができるが、
哺乳類のみは、
ブレーキ遺伝子にタンパク質がくっついて、一時的にブレーキが故障する。
アクセル遺伝子のみが働き、脳細胞が増殖し続ける。
大脳新皮質の誕生である。
ちょうど良いときにブレーキの故障な直るというひどく都合のよい仕組みは、
生命誕生からの40億年に1回有るか無いかのできごとらしい。
4万2000年ほど前の氷河期
ネアンデルタール人とホモサピエンスという2種類の人類がいた。
ネアンデルタールはホモサピエンスに較べて、
大きな脳を持ち、力も強かったが、
4万年ほど前、絶滅した。
ネアンデルタール人が長年暮らした洞窟からは
似た石器が見つかり、
数万年にわたり同じような石器を、全ての作業に使っていた。
一方、ホモサピエンスが暮らした洞窟からは、
用途の応じたさまざまな石器が見つかり、
より創造的で、問題を解決する能力があったようだ。
アイデアを伝える高度な言葉を使っていたのではないかと思われる。
言葉にかかわる遺伝子に、FOXP2遺伝子がある。
マウスは超音波で会話するが、
マウスに人のFOXP2遺伝子を組み込むと、長く鳴くようになった。
おしゃべりになり、より複雑な音を出せるようになった。
2010年、世界で初めてネアンデルタール人の化石からDNAの完全解読に成功する。
ネアンデルタール人と現在のホモサピエンスのDNAを較べると、
FOXP2遺伝子に違いはなかった。
その周辺まで調査を広げた結果、
40万文字の中の、1文字に違いがあった。
ネアンデルタール人がAの所が、ホモサピエンスではTになっている。
あるとき、
ホモサピエンスの中で、突然変異がおこり、A→Tに変異した。
これにより、
タンパク質がくっつくようになり、FOXP2遺伝子の一部の働きを抑えることで
高度な言葉をくることができるようになった。
ただ、どうしてそうなるのかは、わかっていない。
出典「NHKオンデマンド特選『生命大躍進3』」