文化-遺伝子共進化
ヒトはなぜ他の動物とは違うのか。それはルビコン川を渡ったからである。文化が累積的に進化していき、その蓄積された情報と、火や食物分配規範のような文化の産物とが主要な駆動力となって、ヒトの遺伝子的進化を推し進めていった。ヒトがこれほどユニークなのはこのような進化の道を歩んだ現存する動物が他にはいないからである。(中略)
ひとたびルビコン川を渡ってしまった人類は、もう引き返すことはできない。この移行の重大さを知らしめてくれるのが、ヒトは狩猟採集民として長い進化の歴史を歩んできたのにもかかわらず、文化として受け継がれてきたそのノウハウを失ったら狩猟採集では生きていけない、という事実である。
ジョセフ・ヘンリック著今西康子訳『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と<文化ー遺伝子革命>』P.467
ヒト社会は、協力体制の規模や度合いが社会によってまちまちだが、それは、社会ごとにそれぞれ異なる社会規範を進化させてきたからだ。このような規範は、ヒトに生得的に備わっているメカニズムを利用してホルモン分泌や、動機、判断、知覚を変えることによって、大きな心理的効果をもたらし、さまざまな場面での協力傾向を強めたり弱めたりする。
ジョセフ・ヘンリック著今西康子訳『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と<文化ー遺伝子革命>』P.471