進化の大ジャンプー4.3-1 自己とは、社会に調和して生きるために、進化が巧みに仕組んだ道具かもしれない

自己とは、自分自身の中心にあって、独特のものであり、
個人の目標を達成したり自己実現を果たしたりするためのものと思っている。
だが、
自己とは、私たちが集団の規範に従い、社会に調和して生きるために、
進化が巧みに仕組んだ策略の道具なのかもしれない。
進化はまた
「トロイの木馬」のように、外部の信念や価値観を、私たちの中にこっそりと運び込もうとしたのではないか?

人間の内側前頭前皮質の脳全体に占める割合は、チンパンジーに比べて2倍のスペースを占める。
他の霊長類の脳と比べて、これほど大きな割合を占める人間の脳の領域は、内側前頭前皮質を除いてあまり見当たらない。
この領域は、神経細胞の密度が低いため、膨大な数の神経細胞同士がつながりやすい。
内側前頭前皮質は、人間と他の霊長類とを分ける特別な領域である。

内側前頭前皮質は、自分自身について教えてくれる、いろいろな情報を反映する領域なのだ。
そのなかには、
個人的で内省的な情報もあれば、
周囲が自分をどう思っているかという反映的評価から生まれる情報も含まれる。
つまり、
「自分とは誰なのか」という自己感は社会的につくり上げられたものであり、
そのプロセスに関わっているのが、内側前頭前皮質なのである。

                  出典『21世紀の脳科学 人生を豊かにする3つの「脳力」』

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